2月 05, 2024
青森からワインというワンダーランドに入り込み、トゥールダルジャンからアピシウスというグランメゾンソムリエのロールモデルのようなキャリアを歩む工藤順平さんにお話をうかがいました。
工藤先生のご出身は青森県。
飲食との出会いは、高校卒業後、地元のホテルから始まりました。ホテルといっても、最初の配属はバンケット。
毎日、宴会やパーティーのオペレーションに奔走し、そつなくこなすものの、やりがいを感じることなく、最初の3年は過ぎていったと語ります。
一つ目の転機は、ホテル入社4年目にレストラン配属になったことでした。
入り口こそ「取扱うワインくらいは勉強しよう」、という軽いものだったそうですが、次第にワインという不思議な世界に迷い込んでいきます。
そして、当然ワインを勉強し始めたからには、ソムリエ資格が”Get me”と言わんばかりに、工藤先生に語りかけてきます。
しかし、不思議の国のアリスのように水先案内をつとめてくれるうさぎはおらず、勉強は独学でスタート。ホテルにはソムリエ資格を持つ人はおらず、あったのは10年前のソムリエ教本だけ。教本を勉強し終えると、次は書店へ。
こうして22歳からワインに興味を持ち始め、24歳にしてソムリエ資格を取得します。
しかし、ほぼ独学で学んで取れてしまったソムリエ資格は、ひとつの達成の証ではあるものの、自分がソムリエを名乗れてしまうことへの不安のほうが大きかったと述懐します。
不安と向き合うことを決めた工藤先生は、新たな転機を迎えます。
教本でいくらワインと料理のペアリングを説明されても、料理についての知識がなかったため理解が及ばなかった。そんな苦い思いを払拭するために、まずは料理を知ることからスタートすることを思い立ちます。
サービスとして料理に触れていても、料理への解像度を上げるのには限界があります。料理を知るには調理場へ。
ということで、2年間ホテルの調理場での修行が始まります。
最初は当然包丁も持たず、レタスを手でちぎり、玉ねぎの皮をむくところから始まりました。ホテルの厚意と工藤先生のハードワークもあり、2年間の短い期間でお肉や魚の下処理や火入れ、ソースづくりまで経験し、さらに調理師免許を取得します。
「もちろん、当初の目的である、料理についての基本的な知識を得るということへの収穫もありましたが、それ以上に料理人の気持ちを知れたというのが、その後のキャリアの中で非常に大きな財産になりました。」
一皿を完成させるためにかけられた時間と労力を身をもって知れたことは、ワインペアリングにも大きく活かされているそうです。
調理場にいた頃にもワインの研鑽を絶やさないよう、工藤先生はソムリエ・スカラシップに挑戦します。
なんとか予選通過し本選に進むも、サービスから離れていたこともあり、散々な結果に…。
しかし、調理場での2年間の修行を終えて、サービスマンとして再度スカラシップに挑むと、今度は見事受賞に輝きます。
若手ソムリエの登竜門を開けると、ソムリエとして一度は憧れ、夢を見たトゥールダルジャンからお声がかかります。
「地元の青森に残りたいという気持ちも強かったのですが、フランス料理やワインに携わるものとしてトゥールダルジャンの魅力には抗えませんでした。」
こうして、27歳にしてトゥールダルジャンにコミ・ド・ラン(見習い)として入社します。
当然、トゥールダルジャンのようなお店では、20代そこそこでこれまでソムリエとして働いてきた経験やスカラシップに選ばれた実績などは加味されることはありません。
コミ・ド・ラン、シェフ・ド・ランとしてワインに触れることのない最初の2年間は過ぎていきます。
再びワインに触れられるようになったのは入社3年目、ソムリエのポジションにつけたときでした。改めてソムリエという職の楽しみをかみしめながら研鑽を積んでいきますが、9年目に大きな決心をします。
「トゥールダルジャンは、これまで数々の有名ソムリエを育ててきました。わたしが長く今のポジションに居ることで、若い人たちにその機会が回ってこないということではいけないと思ったのが、離れる決心をした理由です。」
今でもいたいと思えるポジションを、それでも後進に譲ることができるというのが、工藤先生のやさしさであり、すごさなのかもしれません。
その後、アピシウスへは2023年の4月に移り、レストラン業務だけでなく、ワインプラスカレッジでの講師業務に、地元青森での地酒アンバサダーにとご活躍しています。
工藤先生のセミナーは下記の通りです!
https://college.wineplus.jp/collections/junpei-kudo
シャンパーニュ騎士団としてシャンパーニュの講座を持たれるかたわら、対策講座では「レストランとかわらず、あくまでゲストファーストで、これから資格を目指される方にワインの楽しみ・魅力を感じていただけたら」と語ります。
最後に、例のごとく工藤先生にも「最後の晩餐」について聞いてみました。
「東北でとれる、ほやを酢醬油で食べたいですね!五味が全て揃っているので、それだけで満足度が高いんです。」とのこと。合わせるお酒にはドライシェリー。
ワインというワンダーランドに入り込んだ工藤先生のセミナーを是非受講してみてください。きっと工藤先生なら、何でもない日でも素敵な一日にしてくれるはずです。
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