3月 30, 2023
車いすの天才物理学者として知られたホーキング博士の最後の論文が、複数の宇宙の存在を示唆するものであったことをご存知だった方もいらっしゃるかもしれません。
今回ご紹介させていただく情野博之先生の『情野博之のテロワールフランス』はまるで情野先生の小宇宙を垣間見るかのような体験でした。
情野先生の講師インタビューはこちらから
https://college.wineplus.jp/blogs/column/20230204
この授業の目玉は何と言っても、情野先生が発掘してきた豪華なワインの数々。ワイン界の生ける伝説が見定めたワインは、単に高級というだけでなく市場ではお目にかかれない、そんな貴重なワインたちです。
授業のテーマは、各回フランスの銘醸地をめぐりながら、珠玉のワインといっしょに情野先生がその地域を解説してくれるというもの。
しかし、さすがの情野先生。解説の内容は、フランスの一地域にとどまらず、世界中のワイン産地の話を絡めながら進んでいきます。
わたしが参加したのは、2023年3月26日の『ブルゴーニュ・ブラン シャルドネの銘醸地、特級街道を利く、圧巻のシャルドネの本質とは』という回でした。
まずはせっかくなので当日のワインリストをご紹介。
1. 2016 Meursault Perrieres / Domaine Albert Grivaut
2. 2010 Chevalier Montrachet / Domaine Bouchard Pere & Fils
3. 2005 Le Montrachet / Domaine Fleurot Larose
4. 2010 Batard Montrachet / Domaine Leflaive
5. 2011 Bienvenues Batard Montrachet / Domaine Faiveley
6. 2017 Criots Batard Montrachet / Domaine Fontaine Gagnard
日本のワインスクールでこれをテイスティングできるセミナーをやっているところって他にあるでしょうか?おそらくないでしょう。
それもそのはずMontrachetといえば、『三銃士』の作者としても知られるアレクサンドル・デュマをして「脱帽し、跪いて飲むべし」と言わしめたワインです。スクール向きのワインか、と問われれば決してそんなことはないでしょう(こんな機会でもないと、とても手が出ないのも本当のところですが…)。
当日も受講生全員で「脱帽し、跪いて飲む」……気概でテイスティングさせていただきました。
セミナーでは、情野さんがリアルタイムでスライドに情報を書き足しながら、話を進めていくスタイルで、先述の通りブルゴーニュの授業であっても、オーストラリア、アルゼンチン、日本のワイン産地、歴史、科学など地域も分野も問わず、話は縦横無尽に広がっていきます。
もちろん、現地に何度も赴き、現地のメーカーと対話をしてきた情野先生だからできるお話も満載。
その様は、まさに情野ワールドといった感じで、長い年月第一線のソムリエとして活躍されてきた情野先生にしかできないであろうスタイルです。
そして、ところどころに入る、アピシウスや情野先生のプライベートでのこぼれ話でしっかり笑いをとっていく、熟練した話の技法がそこにありました。
要所要所では笑いもあるものの、授業内容はしっかりと学びの多いものです。
授業開始から一杯目のテイスティング開始までは、40分ほどかかります。美味しいワインリストを予め知っているだけに我慢も必要なのですが、しっかりお勉強した分、ワインへのカタルシスは素晴らしいものがあります。
テイスティングについても、色合いの見方、香りの取り方、味わいの表現、合わせる料理とのペアリングなど基本をおさえてくれるのですが、魚卵とのペアリングなど「あっ。これは知ってるやつだ。」と思っても、情野先生にかかれば、もう一歩も二歩も踏み込んで話してくれるので、既存の知識であっても新しい発見に事欠きません。
授業を終える直前には、情野先生が改めてその日のワインを振り返って試飲する「リテイスティング」を促してくれます。
実際に全てを飲んだうえで、振り返って飲むワインはまた違った表情が見えて面白いんです!また、情野先生のお話しされていたことが、よりよくわかるつくりにもなっており、美味しいワインで授業を振りかえって夢見心地で終えることができました。
授業を終えても、すぐに席を立とうとする人はいませんでした。みなさん並んだ6つのグラスを飲み干さないまでも、情野先生が示してくれた小宇宙を最後まで楽しもうとじっくり向き合っていました。
情野先生が数十年かけて紡いできた小宇宙をのぞかせてくれる、素敵な授業はこちらから
https://college.wineplus.jp/collections/hiroyuki-seino
えっ、少し値段が高い?
大丈夫です。冒頭のホーキング博士もこう言っています。
“Life would be tragic if it weren’t funny.(人生は面白くなければ悲劇だ。)”
休日のお昼時、つかの間の宇宙旅行を広尾でお待ちしております。
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