10月 13, 2023
存命の人にこのような比喩を使うのは、間違いであるということは重々承知していることを最初にことわっておきます。
しかし、わたしのようなワイン経験の浅い者にとって、ルロワという名前を聞くことは、アーサー王のように実在したかもしれない神話上の人物の名前を聞くのに等しいのです。
さらに言えば、ドメーヌ・ルロワの90年のグランクリュの抜栓を見るというのは、もはやアーサー王伝説に登場する聖剣エクスカリバーの抜剣に立ち会うようなものなのです。
そんな神がかりな体験をさせていただいた、ルロワという神話を巡るセミナーをご紹介してまいります。
本セミナーは、日本人でも珍しいルロワと会話をしたことのある大越さんによる、ルロワ史から幕を開けました。
1868年フランソワ・ルロワによって創設されたメゾン・ルロワ。二代目アンリ・ルロワが50%の株式を取得することで始まったドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ(以下、DRC)との関係。そして、三代目ラルー・ビーズ=ルロワとDRCとの確執、ドメーヌ・ルロワの誕生。
ルロワとDRCの確執などは、もはやギリシャ神話の神々の喧嘩について聞いているような心持ちです。
また、さすがはフランスで栽培学・醸造学を修めている大越さん、さらっと入れてくれるワイン造りの話もとても面白いのです。低温浸漬と全房発酵、アルコール発酵と抽出、摘芯と果実の成熟度、物理的熟成とフェノールの熟成。ひとつひとつここで説明していくとキリがないですが、少しでもワインをかじったことのある人なら聞いたことのある知識が繋がり、知恵となっていきます。
その後は、ドメーヌ・ルロワや今回飲むワインのヴィンテージ情報、テロワール情報と丁寧に説明してくれます。
セミナーが始まる前は、とにもかくにも「ルロワを飲む」ということに意識が向きがちですが、気づけば大越さんのトークにすっかり引き込まれてしまっていました。
そうは言っても、やはり気になるワイン。セミナーも折り返し地点に到達し、出てきたのはパニエに入れられた今回の目玉1990年のクロ・ド・ラ・ロッシュ。
衆人環視の中、100万円近い金額のヴィンテージワインの抜栓をするなんて考えただけでも卒倒ものが、それを笑顔でしゃべりながらやってのけるのがソムリエ。
大越さんも、デュランド(ワインオープナー)の解説を入れつつ、鮮やかな手際で抜栓してくれました。
実物のワインボトルも出てきて会場が温まった頃、ついにワインが到着します。
最初に出てきたのは、2002年のポマール。
繊細な口当たりから、中盤から余韻へのほど良いタンニン、なんてテイスティングコメントを書いて伝わるものではないことはわかっているのですが、色々言いたくなってしまう素敵なワイン。
テイスティング時間はしっかり取られているので、参加者のみなさんはそれぞれ自分の時間でしっかりと一杯と向き合い、大越さんが適宜そこに解説を加えてくれます。
次は、ニュイサンジョルジュの一級畑ヴィーニュ・ロンドのヴィンテージ違いの飲み比べ。2000年、1998年、1997年、それぞれ予め大越さんが説明してくれたヴィンテージの特徴をよく感じられ、1杯目のポマールとの違いもわかりやすく言語化してくれます。
地質の違いから2~4杯目のコート・ド・ニュイには1杯目のコート・ド・ボーヌにない、アニマル系の香りが感じられるとのことですが(実際にしっかり感じられました!)、より踏み込んだテロワールの説明は次回に聞くことができるそうです。
そして、最後には先ほど抜栓を見届けた1990年のクロ・ド・ラ・ロッシュ。
30年以上前のヴィンテージにもかかわらず、力強い凝縮感や飲んだ時のテクスチャなどはやはり村名、一級畑とは格が違います。
最初に飲んでたしかに感動したポマールも、クロ・ド・ラ・ロッシュの後だと、少し霞んでしまいます。たった数十分で人はこんな贅沢になってしまうのですね…。
贅沢な時はゆっくり流れるようで、セミナーがいったん中締めとなったのは、予定終了時刻の30分後。
それでも、みなさんグラスに残った液体と向き合うべく、その後も会場に残って、大越さんに質問を投げかけるなり、粛々とテイスティングを行うなり、思い思いの時間を過ごされていました。
さてみなさん、冒頭でアーサー王の持つ魔法の剣エクスカリバーについて言及しましたが、エクスカリバーが二振りあったという説があるのをご存知でしょうか?
ひとつは、アーサー王が引き抜き自分の血筋を証明することとなった剣。もうひとつは王になった後に湖の乙女から与えられた剣。
奇しくも、今回の大越さんのセミナーも二本立て。ルロワが手ずから生み出すドメーヌ・ルロワのセミナーと、ルロワがその高いテイスティング能力で買い付けたネゴシアンもののメゾン・ルロワのセミナー。
ドメーヌ・ルロワのセミナーは今回で終了してしまいましたが、メゾン・ルロワの回は来月11日です。
後世の作品では湖の乙女に与えられたエクスカリバーこそ本物であるといわれているそうですが、ルロワも実はネゴシアンものが起源であり、より古い歴史を持っています。
どちらが本物のエクスカリバーか(あるいはどちらも本物か)、見極めるためにも是非ご参加ください!
大越 基裕の世界を席巻するスター生産者を利くMaison Leroy
日程:11月11日(土) 11時00分~13時00分
ワイン:
1988 Meursault 1er Cru Les Perrieres
1985 Chambertin
1980 Bonnes Mares
1976 Romanee St Vivant
1964 Grand Echezeaux
https://college.wineplus.jp/collections/interest/products/wpccourse013
60年代~80年代のメゾン・ルロワの珠玉のワインご用意しておりますので、ご興味のある方は是非お申込みお待ちしております。
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