3月 28, 2023
アルバイトの倉庫作業から始まり、ドイツ・オーストリアワイン専門商社ヘレンベルガー・ホーフ株式会社の取締役まで昇りつめた宮本駿さんにお話しをうかがいました。
宮本先生が最初にヘレンベルガー・ホーフとかかわりをもったのは、大学3年生の頃。
人づてに紹介してもらったヘレンベルガー・ホーフの倉庫バイトからスタートします。
ドイツワイン特有のラベルの読みづらさに苦戦しつつ、甘口モーゼルワインの美味しさに開眼したのもこのときだそうです。
しかし、当時は一昔前に流行った甘口ワインを飲んだことのある人たちが、物知り顔でドイツワインを軽んじる時代。
「こんなに美味しいのに、わかってもらえないなんて、」
ドイツワインをより世の中に広めていくために宮本さんはヘレンベルガー・ホーフへの入社を決めます。
新卒でヘレンベルガー・ホーフに入社したはいいですが、まだまだ気持ちだけの青二才。当時はドイツワインの知識もなければ、そもそものワインのいろはすらおぼつかない状態でした。
ワインの勉強もかねて、当時新装開店した東京三越本店で販売員の仕事を任されます。
そこで世界中のワインを飲みながら、会社の人に早く追いつかなくてはという焦燥感もあり、ワインの勉強をしていきます。
販売員の仕事は1年ほど続きましたが、いざ会社に戻っても力不足を痛感する日々。
そんな宮本さんにひとつの出会いが訪れます。
自社で取り扱っていたゲオルグ・ブロイヤーというドイツのワイナリーからの当主来日です。
やってきたのは、なんと当時24歳の宮本さんと同い年のお嬢さん。
ブロイヤーは先代のベルンハルト氏を早くになくし、娘のテレーザ・ブロイヤー女史が引継ぎ、若いながらに立派に当主業を営んでいました。
自分と同い年の女性が、有名ワイナリーの看板を背負って、大勢の前で見事にプレゼンテーションをやってのける。そんな姿に心打たれたと言います。
奮起したはいいが、まだまだ自分の実力がともなわず思った結果が出せない日々。
自分の不甲斐なさから辞めようと思ったことは一度や二度ではないと言います。
そんなときは決まって、ひとり大好きなワインと向き合うことにしているそう。ワインを飲んでいると、浮かんでいるのは実際に訪れ出会った生産者の顔。
「もう少し頑張れば、今とは違う景色が見られるはず。」
そう信じながら、挫折した心を奮起させていたそうです。
立ち直り方が素敵ですね。
青二才だった宮本さんも、13年の時を経て、2020年4月についに課長職へ。
しかし、2020年といえば、まさにコロナが広がり始めた頃です。
レストランやホテルへの販売が主だったヘレンベルガー・ホーフさんは早速苦境に、と思われるかもしれませんが、生産者との繋がりが強かったこともあり、ピンチをチャンスにと動画配信やSNS施策を立て続け打っていきます。
生産者とZoomを繋いでのワインセミナー、オンラインでの試飲会の開催、インスタグラム、フェイスブック、ライン、使えるものは何でも使い、できることは何でもやったと語ります。
平社員、課長と続いて、苦節16年2023年2月に、宮本さんはついに取締役にまで上りつめました。
ドイツワイン不遇の時代から、ドイツワインやオーストリアワインを日常の一杯にしていくための宮本さんの奮闘劇はまだまだ続きます。
そんな宮本先生が受け持つセミナーは、『五感で楽しむドイツワイン』です。
ドイツ人顔負けの几帳面さで作られた100枚以上のスライドと現地から持ち帰ってきた岩石標本などを用いながら、文字通り五感を通じてワインを体感できるようになっています。
最後に、例のごとく宮本先生にも「最後の晩餐」について聞いてみました。
「最後は普通の家庭料理を食べながら、昔テレーザ・ブロイヤーさんに飲ませていただいたラウエンタール・ノンネンベルク・リースリングの2001年を飲みたいですね。わたしに火をつけてくれた思い出のワインですので。」
一見すると、落ち着いた印象を受ける宮本さんですが、ふつふつと燃えたぎる内なるパッションは若いころからずっと強くなっています。
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