1月 11, 2023
ワインプラスでセミナーを行っている講師の方々にワインの世界に入ったきかっけや受け持つセミナーを話していただく講師インタビュー企画。
第一弾はイタリアワインをご専門とする永瀬喜洋先生です。
「ピザが食べたかったからです。」
永瀬先生にワインの世界に入ったきっかけを尋ねると返ってきた答えがこちらです。ピザである。
お話をうかがうと、大学在学時にピザが食べたくて、地元名古屋のピッツェリアへのバイトを始めたことが飲食キャリアのスタートだったそうです。その後、イタリア帰りのシェフが経営するリストランテに移り、そのお店の本家でもあったイタリア、ボローニャでの修行の日々が始まるそう。
急なイタリアへの場面転換に驚かれた人もいるかもしれませんが、リストランテ時代は一緒に働く人もイタリア人、オーナーの奥様もイタリア帰りということで公用語=イタリア語という状況だったそうで、イタリア行きにも踏み切れたのだとか。
映画のような素敵な世界がボローニャで待っていたかというと、そうは甘くありません。
当時イタリアのリストランテでは住み込み方式で働くところが多く、永瀬先生もリストランテが用意した建物に住み込んで生活することとなります。
そこでは。古今東西の例にもれず、厳しい実力主義の縦社会があったそう。
新旧二棟のアパートメントではリストランテでの立場がそのまま部屋取りに反映しており、熾烈な競争が日夜繰り広げられていたそうです。
「当時は相当苦労されたのではないですか」、とうかがうと、
「大変だったのはイタリア入国して最初の2週間くらいですよ」
と澄まして答える永瀬先生。伊達男である。
ボローニャでの生活を終えると、次第にワインの収穫時期が近づいてくる頃でした。
世の中ではトスカーナで造られるカベルネなどの国際品種がスーパータスカンとして高く評価されており、永瀬先生はこう思ったそうです。
「スーパータスカン、飲みたいな。」
そうして、ワインツーリズムも盛んなこの地に仕事を見出し、ワイナリーのアテンドなどをしながら数ヵ月トスカーナでの生活を満喫。
収穫時期も終わり、今度は冬の気配が次第に強くなってくると、
「暖かいところに行こう。」
ということで、南下です。シチリア島まで数ヵ月かけて、現地のワイナリーなどを訪問しながら小旅行を楽しみます。
シチリアに着いた頃には、まだ行けてなかった北西地域、イタリアワイン産地の雄ピエモンテを見ておかなくては、ということでピエモンテのリストランテの職を勝ち取ります。
お気づきの読者さんも多いかもしれませんが、そうです。永瀬先生、実は本能で動いているのです。これがラテン。
本能の男、永瀬先生もピエモンテでのリストランテ生活に馴染んだ2001年。
アメリカでの同時多発テロ事件が起き、世界的に緊張が走ったこの年は外国人ビザがおりづらく、永瀬先生も一時帰国を余儀なくされます。
現地仕込みのイタリアワインの知識とリストランテでの経験は、帰国後も歓迎され、新店起ち上げのマネージャー業など期せずして永瀬さんは仕事の幅を広げていきます。
と同時に、この頃から帰国後のキャリアについても思いを巡らすようになっていきます。
そこで思い当たったのが、イタリアのソムリエ界隈では確立したワインを活かしたコンサルティング業という仕事のスタイルです。
リストランテなどにお酒を卸す、いわゆる業務用酒屋が一般的でないイタリアにおいて、ワイナリーとリストランテやトラットリアを繋ぐコンサルタントの存在は非常に重要でした。
日本でもイタリアワインとレストランを繋げ、さらにはイタリアワイナリーとインポーターを繋ぐ仕事の可能性を感じた永瀬先生は、そのために動き出します。
日本でも発信力をつけるため、有名イタリアンでの経歴を積み、ソムリエコンクールにも出場(そして優勝!)、そうして2018年には自身の会社である株式会社クアトロヴィーニを創業します。
創業後にワインスクールの講師業もスタートされ、今日こちらで紹介させていただくに至る、ということになります。
そんな永瀬先生のセミナーには『ジーロイタリア』と『ラ・ストリア』という二つのコースがあります。
■永瀬先生の講座一覧
https://college.wineplus.jp/collections/yoshihiro-nagase
イタリア周遊旅行をコンセプトに20州を巡り続けながら、6つのワイン(基本的には泡1種類、白2種類、赤2種類、甘口1種類)を飲みながら、それぞれの州の特徴と最新情報をお届けするジロイタリアと、時間旅行をテーマに一つの地域、一つの生産者のバックヴィンテージを垂直試飲して、その時代、その当時の生産者に思いを馳せるストリア。
現地を知っている永瀬先生だからこそできる、イタリアワイン好きにはどちらもたまらないセミナーとなっております。
勉強のためをのぞいてプライベートではイタリアワインしか飲まないし、イタリアンで食事をすることが多い永瀬先生ですが、最後の晩餐には奥さんの作る創作料理、「鶏むね肉の巻き揚げ」をバルバレスコと楽しみたいとのこと。
最後に愛妻家な一面を見せてくるあたり、イタリアニズムここに極まれり。
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