7月 07, 2024
真剣なまなざしでグラスに向き合い、灯りにかざして色を見て、グラスを回して匂いを嗅ぎ、ごくごく少量を口に運ぶ。
傍から見れば、ワインのプロのテイスティング技法は不可解に映るかもしれません。
しかし、ある英国作家が言うように「狂気を生むのは実は理性」ということで、その不可解な行動の裏には実に精緻なロジックが横たわっています。
今回はプロがテイスティングの時に、何を考えているのかを、全日本最優秀ソムリエ 谷宣英さんの著書『WINE TASTING BIBLE』から紹介させていただきます。
テイスティングのお作法についてはイメージがつく方も多いかもしれませんが、「ブラインド」テイスティングとはなんぞや?というところを最初にお伝えさせていただきます。
ブラインド(Blind=盲目の)とあるように、ブラインドテイスティングとは、ワインの銘柄を見ずにワインを飲むことで、しばしばそのワインの産地/品種/年代などを推測するテスト要素を持つこともあります。
ソムリエの資格試験やコンクール等では、このブラインドテイスティングは必須となります。
では、なんでそんなことが可能なのかを、ブラインドテイスティング中のプロの頭の中をひも解いていきましょう。
冒頭でも紹介したように、テイスティングの際は色・香り・味を見て、そのワインの個性を判断します。
具体的には、この判断には次の5つのプロセスが伴ないます。
1. 甘辛度やフレーヴァーから大まかに産地を予想する
2. 香り・味わいの要素から当てはまる品種を絞り込む
3. 味わいの強さや土地の香りから産地を絞り込む
4. 造りによる特徴の有無から醸造方法を予想し、詳細産地や生産者を絞り込む
5. 1~4で絞り込んだ内容から国、地域、ブドウ品種、醸造方法、造り手を判断する
ワインをテイスティングした時、プロの頭の中ではこのような思考が同時並行的に走っています。
最初に考えるべきは、「甘辛度やフレーヴァーから大まかな産地を予想する」ことです。具体的には、甘みを感じたら新世界、ミネラルやフレーヴァーを感じたら旧世界と広めに候補を持っておくことです。
次は「香り・味わいの要素から当てはまる品種を絞り込む」ことです。どんなタイプの香りを持っているか、味わいの中で目立った要素は何かという切り口でブドウ品種の候補をいくつか挙げます。
産地、品種と来たら、次は「味わいの強さや土地の香りから産地を絞り込み」ます。ここで大事になってくるのが、味わいの強さの評価方法です。
味わいの強さは、酸味と甘み・果実味のバランス、そして酸味+甘み・果実味とアルコールのバランス、そして苦みやタンニン(*赤ワインの場合)が生み出す味わいの厚みから判断していきます。
それぞれの要素が大きいとフルボディ、逆にそれぞれが小さいとライトボディとなり、ざっくりといえば、味わいが強いものほど温暖な産地の可能性が、味わいが弱いものほど冷涼な産地の可能性がそれぞれ高くなります。
そして、土地の香りとは、血や鉄のニュアンスがあれば鉄分の多い土壌、ミネラルを強く感じれば石灰質土壌という風に判断していきます。
ここまで来たら、次は「造りによる特徴の有無から醸造方法を予想し、詳細産地や生産者を絞り込む」という作業に入ります。
樽香の有無、ある場合はバニラ香であればフレンチオークの可能性、ココナッツやスパイスの香りであればアメリカンオークの可能性を検討し、酸味の質でまろやかな乳酸を感じればマロラクティック発酵(M.L.F)というように評価していきます。
最後に、ここまで見てきたことを全て勘案して、具体的な国・地域・ブドウ品種・醸造方法・造り手を判断していきます。
これがワインのプロの頭の中です。
難しそうですか?
実際、簡単ではありません笑
でも、冒頭の英国人作家はこうも言っています。
「する価値のあることならへたでもいいからやってみる価値がある」
外して当たり前の世界ですので、気負わず楽しんでやってみてください。
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