6月 06, 2023
ワインプラスが輸入するワインとの最初の出会いについて語ってもらう『ファーストコンタクト』。記念すべき一回目は、若いメーカーながらド注目を集めるドイツのワイナリー、カンツハイムです。
海外市場視察に行った際に見つけたワインを、数年後に立ち上げた会社で輸入する。
こう書いてしまうと、「ワインの輸入なんてわりとそんなもんでしょ」なんて、少し無味乾燥に聞こえるかもしれません。
確かに、多かれ少なかれワインの輸入ビジネスなんて、そういうものです。しかし、出会いの解像度を上げてみましょう。
かつて、フランスの女流作家フランソワーズ・サガンは
「わたしの本の中ではドラマチックな事件が少ないのですが、それは、考えてみるとすべてがドラマチックだからです。」
といいましたが、まさにその通り。少し解像度を上げれば、いかに一つ一つの出来事が素敵なものなのかが見えてきます。
それがこの『ファーストコンタクト』です。
カンツハイムとの出会いは、2018年にWines of Germanyの招待でドイツを訪れ、モーゼル、ラインガウ、ラインヘッセンといった有名生産地を回る中でやってきました。
カンツハイムは2016年に創設された若いワイナリーですが、当主のアンナ・レイマンは、過去10年でパーカーポイント100点を21回叩き出した規格外のワイナリー、マーカス・モリトールで経験を積んだ実力派。
素晴らしい経歴を持つ彼女ですが、結婚・妊娠を機にワイン造りからは一度離れていました。
そんな彼女の転機は、突然訪れます。
子どもをベビーカーに乗せてお散歩していたある日、目に留まったのはザール、カンゼムで最も傾斜のあるゾンネンベルクの銘醸畑。
素晴らしい畑にもかかわらず、聞いてみると後継者不在で放棄寸前とのこと。さらに、実は同じような境遇の畑が他にもいくつもある、ということを知ります。
気がつけば、まるで畑が人を選ぶかのように、2haの畑がアンナのもとに集まっていました。
ヴァイングート・カンツハイムの誕生です。
そこから数年後,カンツハイムは3年後にワインエクスペリエンスを起ち上げる田上さんと出会います。
「ドイツのそれぞれの銘醸地を見に行って、素晴らしいワインをたくさん飲ませてもらいましたが、カンツハイムの持つ存在感は別格でした。さらに驚いたのは、そんな素晴らしいワインがまだワイナリーとして2年目だったことです。このワインとだったら、このワイナリーとだったら、一緒に成長していける、そう確信しました。」
なにをもって自社のワインを選ぶのか。
その問いには、各社三者三様の答えを持っているはずです。
人で選ぶところがあれば、知名度で選ぶところもある。そんな中、ワインエクスペリエンスのひとつの答えは「成長」でした。
ワインが季節ものであることは、いまさら言うまでもないでしょう。この年は素晴らしい気候に恵まれた…、このヴィンテージは難しい年だった…。
しかし、ヴィンテージの良し悪しをワインメーカーの成長が凌駕することはしばしばあります。
「すでに海外で知名度の高いものを日本に持ってきて、効率よく販売することが、ビジネス的には正しいのかもしれません。ですが、まだ知られていない隠れた宝石を探し出して、一緒になって一歩ずつ前進していく。そういう風に思えるワインを常に探しています。」
さて、冒頭にあげたフランスの作家サガンの言葉にはこういうものもあります。
「お酒はいつも私の良き共犯者でした。」
ワインエクスペリエンスは素敵な共犯者になってくれるワインをこれからも皆さんにご紹介していきます。
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