2月 24, 2023
「ワインってどこか遠い存在」そんな方にもワインの魅力を知ってもらうために、ワイン業界以外で活躍されるウワサのあの人にワインとの付き合い方をお聞きする企画『ユアワインエクスペリエンス』。
記念すべき第一回は、アフリカの教育と雇用創出のために2010年から「変革者」として、「挑戦者」として活躍される株式会社DOYA、CLOUDY代表の銅冶勇人さんにお話をうかがいました。
まずは、銅冶さんとCLOUDYについてご紹介させていただきます。
銅冶さんとアフリカのファーストコンタクトは、大学の卒業旅行です。ケニアでマサイ族のホームステイを経験した銅冶さんは、現地で様々な問題を目にしますが、中でも教育と雇用が問題の根幹にあると感じ、2010年にNPOを設立します。
しかし、NPOをより持続的なものにしていくために、2015年にCLOUDYというガーナでのテキスタイルやデザインを活かしたアパレル商品の開発と販売をスタートします。
アフリカと日本という価値観や文化の違いを日々感じながら、NPOとビジネスという両輪で、アフリカという地に、そして日本における「アフリカ」という地のステレオタイプに、変革をもたらすための挑戦に日々取り組まれています。
いまでこそお酒の中だと、ワインを一番飲む(特に白ワイン)ということですが、その出会いはほろ苦いものでした。
知り合いの先輩のご自宅に招かれ、出していただいたワインの抜栓を任された銅冶さん。当然、ワインオープナーの扱いなど慣れておらずに、コルクはボロボロに……。
それからはワイン抜栓の機会があるごとに練習したとのこと。銅冶さん、真面目です!
その後もワインにはどこかお高いイメージを持っており、レストランなどでは飲むものの、ワインを飲むということには少し気負って、背伸びしながら付き合っていたそうです。
そんな重荷を取りはらってくれたのは、今でも行きつけのレストランのソムリエールさん。
「ワインなんて美味しく、楽しく飲めれば、それでいいのよ!」と教えてもらい、ワインが一気に身近に存在になったと言います。
お話をうかがっていくと、なんとCLOUDYという名前のインスピレーションも、ワインから来ているそうです。
CLOUDYを起ち上げる前、構想自体はあったものの、事業名やコンセプトなどに思い悩んでいた時に、たまたま飲んでいたワインはニュージーランドの“CLOUDY BAY”、自分の頭の中のようにモヤっとしたラベルを見ながら、「これだ!」と思ったそうです。
「アフリカの明日一日をどう生きるかという死活問題からすれば、自分の悩みなんてたかが知れているというのは、頭ではわかっている。だけどそれでも,うじうじ悩んでしまうのもまた人間です。人生晴れの日もあれば、当然雨の日もある。晴れを楽しみ、雨を耐え忍ぶのは誰もが同じだろうけど、曇りの日を楽しめるどうかはその人次第。『曇りの日も楽しんで生きる』というコンセプトでCLOUDYの名前を決めました。」
ここからは、NPOの世界においても、ビジネスの世界においても、第一線で活躍される銅冶さんにワインとビジネスについてお聞きしてみました。
ビジネスの世界(特に経営者層)には、ワイン好きも多く、ある程度ワインを知っているだけで会食シーンのコミュニケーションの一つにもなり、また普段高級ワインばかりを飲んでいる経営者に安くて美味しいワインを紹介すると喜ばれると言います。
「ワインも自然とともに作り上げていくアートですよね。自然相手のものだから、天候や自然災害など、当然ワイン造りにとってポジティブなこともあれば、ネガティブなこともある。だけど、変化をいかにポジティブに変えられるか、マイナスをいかにプラスに転換するかというのは、ビジネスシーンにおいても、重要なポイントです。ビジネスは奇想天外ですから(笑)。」
聞いてみると、たしかに銅冶さんのビジネスは奇想天外・驚天動地です。
ガーナに学校を建設する際に、半年間も建設現場に誰も来ないことがあり、後になって話を聞いてみると「神が休んでいいと言った」と言い訳されたり、CLOUDYの現地工場でパートさんが工場のミシンを勝手に売って換金していたり……。
「たしかに最初は憤りを覚えますよ。でも、生まれも育ちも違えば行いも変わってきます。わたしだって同じ境遇だったら、同じことをしてしまっていたかもしれない。道徳やモラルも結局は環境次第で、知らず知らずのうちに、自分が自分のルールを押し付けすぎていたのかもしれないと自戒する、いいきっかけになりました。」
アフリカという、日本人がまだまだ色眼鏡を外せない地域の意識変革を行う銅冶さんに、若いころの銅冶さんがワインへ抱いていたような、頭でっかちでスノッブな印象を取り払うにはどうすればいいかアドバイスをいただきました。
「わたしがCLOUDYを始めるときに、迷いなく最初に決めたのは『店頭で、アフリカの写真を飾るのをやめる』ということでした。」
これには二つの理由がありました。一つ目は、銅冶さんが「アフリカの問題を写した写真が多く飾ってあるお店で商品を購入したいと思うか」とアンケート調査をしたところ、約7割がNOと答えたからです。そしてもう一つ目の理由は、「順番を変える」という銅冶さん独自の戦略に基づくものだったそうです。
これまでのアフリカ支援事業などは、
「問題意識を持ってもらう」→「支援のための寄付や購入を募る」
というものでした。
しかし、これでは持続的なものは作れないし、なにより日本におけるアフリカに対する意識改革はなしえないと思った銅冶さんは、
「魅力的な商品を購入してもらう」→「問題を知ってもらい、自分がそこに支援していたということを知ってもらう」
という順番に逆転させたと言います。
どこの業界でもすでに用意されている入り口というのは、誰かが作ったもので、そこから入る限り、イメージ刷新というのは難しい。新しいイメージを作りたいのであれば、入り口を変えることを考えてみては、とお話しくださいました。
これまでに約3000名の子供たちに教育の機会を、620名の障害者と女性に雇用を、約300万食分の給食をアフリカにもたらしてきたCLOUDY代表の銅冶さんの思いに賛同される方はCLOUDYのお店への来店、寄付のご検討をお願い致します。
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