10月 12, 2023
悩めるワイン業界人(と未来のワイン業界人)におくる「THEワインキャリア」の今回は、首都圏のワイン・食材流通のインフラと言っても過言ではない株式会社TATSUMIのワイン営業マネージャー水上雅央さんにお話をうかがいました。
水上さんがTATSUMIに就職したのは調理師学校を卒業した数年後。
たまたま目に入った新聞折り込みチラシがきっかけでした。
家から10分で行ける距離の会社で、90年代初頭で初任給27万円という高給に惹かれて面接に行ったと語ります。
ワイン事業部に配属となり、配達や倉庫業務からスタートします。
仕事の覚えも良く、早々にまだ3名しかいなかったワイン営業に配属になると、毎日6,7軒の営業をこなしていたそうです。
「ありがたいことに、今でこそ仕事をいただくことが増えていますが、昔は仕事を日々取りに行かなくてはいけませんでした。」
そうは言っても、「時代の波にうまく乗れた」とも述懐されます。
90年初頭に入社し、97年には赤ワインブーム、その後もイタリアワインブームなどワインが広まっていくにつれて、TATSUMIのビジネス範囲も広がっていきます。
もともとワインの知識がなかった水上さんですが、プライベートなワイン会や書籍などを通じて知識を深めていったと語ります。
「当時は五大シャトーでも、ブルゴーニュの有名ドメーヌでも、まだまだ手に届く価格でしたからね。ハイエンドになりすぎてしまった今のワイン業界と一番違うところですよね。」
3名の営業チームに配属された水上さんですが、上司の退職や社員の増加などもあり、入社3,4年目にはマネージャーの役職に就いたそうです。
マネージャー就任後は、効率的でスムーズな商談を可能にするため、取引インポーターがTATSUMIの顧客と直に金額ベースで交渉できるようにするなど、業界ルールにとらわれない自由な取り組みをスタートしていきます。
営業にも裁量と自由を与え、営業方法を縛るようなことはせずに、個人のやりたいようにやらせ、結果が出るか見守っていくようなスタイルだといいます。
TATSUMIでの歴が30年を超える水上さんにこれまでの変遷についてもうかがってみると、
「TATSUMIはもともと戦後の闇市に起源があると言われています。そこから1954年に会社を創業し、ながらく食品問屋として成長してきました。わたしが入社する10年ほど前から洋食店への食品卸が多かったことに目をつけ、シナジーのあるワイン卸をスタートしていったというのが弊社の概要です。わたしが入社してからでも会社の規模は数倍に伸びていますが、その要因は本社の移転と物流機能強化にあったと思います。」
もともと江古田にあった会社を、現在の昭和島に移したことで倉庫機能も拡充でき、都内へのアクセスも向上、さらに当時では早いリーファートラック(温度管理トラック)を導入することでワイン専門問屋としてお客さんからの信頼を獲得することができた、そう語ります。
現在では50台を超えるトラックと760㎡のワイン専用倉庫、そして何より首都圏を中心とした飲食店との強い信頼関係が他の企業との大きな差別化要因になっているようです。
さて水上さんのキャリアの秘訣はどこにあったのでしょうか?
お話をうかがった中で感じたのは
・結果で語る
・正面から向き合う
・運を味方につける
営業に求められる能力は、何においても結果を出すということに他なりません。水上さんは、若かりし頃に偶然TATSUMIの折り込みチラシに出会っていますが、それが違う業界のものであれば、きっとそこでもしっかりと結果を残していただろうなと感じさせる信頼感に満ちています。
またTATSUMIのワイン営業が自由な社風で機能しているのも、水上さんのような上司が人一倍結果を出すことでいかにあるべきかを伝えているのだと思います。
また、水上さんが若手に伝えることのひとつが、「逃げないのが一番の近道」ということだそうです。
日々仕事をしていて、何の失敗もないなんてことはありえません。失敗したときこと、逃げずに向き合い対応すればこそ、顧客との信頼関係が築かれるに違いありません。
最後には「運」です。
「大きな商談が決まったときに、なんでこれが成功したんだろうと後から考えてみると、意外と運の要素が強いんですよね。」
パナソニックの生みの親にして経営の神様とも言われる松下幸之助も採用面接の際には、「君は運がいいか?」と質問したといいますが、運を味方につけられる人、運を味方だと思える前向きな人はどんな状況でも結果を残すことができるのでしょう。
最後にワイン業界で働く人(これから働く人もふくめ)への伝えたいメッセージをうかがってみました。
「人は知らず知らずのうちに、楽な方に進もうとしてしまうし、気をつけていないとおごりが出てしまう、営業という仕事にはこれは本当に良くない。しっかり自分を律し、営業としての選球眼を磨くことは大事なことです。」
「どういう会社で働くのがいいか」と水を向けてみると、
「弊社(TATSUMI)に入るといいですよ!年二回くらいは海外出張して勉強もできるし、給与も業界水準からすれば高い、ノルマもないゆるやかな結束感のある働きがいのある社風です(笑)」
とのことでした。
一般の方からすると見えづらいBtoB企業ではありますが、ワインビジネスの縁の下の力持ちである酒販問屋さんを思いながら、ワインを飲む日があってもいいかもしれません。
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